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勤労者の健康状態は労働環境や労働内容によって大きく影響を受ける。バブル経済崩壊以降、大阪府の産業の根幹をなす中小企業の労働環境は厳しい状態が続いており、そのことが勤労者の健康状態に影響を及ぼしていると懸念される。大阪の勤労者の健康を守るためには、勤労者の健康問題を早期に把握し、実態に適した対策を行うことが必要である。
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企業勤労者の健康状態は、バブル経済の崩壊の1990年代以降、従業員数の削除(図1)に伴い、高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリックシンドローム等の有所見者の割合が増加しているなど、全般的に悪化していることが明らかになった。特に高血圧については、肥満している高血圧者のみならず、肥満していない高血圧者の頻度の増加が顕著であった(図2)。すなわち、血圧上昇に肥満以外の要因が関与しており、人員削減にみられる労働環境の激化が生活習慣の悪化、精神的ストレスの増加、受療の制限等をもたらし、そのことが血圧上昇に関わっているのではないかと考えている。なお、当センターでは、これらの企業勤労者から発生する脳卒中、虚血性心疾患の登録も行っている。1990年代以降の健康状態の悪化がこれらの循環器疾患の発生にどのように影響を及ぼすかについて現在調査継続中である。

我々は、1963年より八尾市南高安地区住民の循環器健診を継続して行っており、地域住民の高血圧や糖尿病、高脂血症などといった循環器疾患に対するリスクの評価を行ってきている。また、大阪の主に事務系の勤労者集団の定期健康診断を継続的に行っており、それら集団の評価や適切な保健指導を行ってきている。大阪府内の地域住民と勤労者集団の健診に同時に携わっている特徴を活かし、それぞれにとって特徴的な問題を同定することに努めている。また健康サービスが府民の健康に与える影響についても重要な検討課題であると認識している。
平成20年4月から、「高齢者の医療の確保に関する法律」により、医療保険者は、腹部肥満によるメタボリックシンドロームの早期発見を目的とした健康診査(特定健康審査)を行い、健康診査でメタボリック症候群、あるいはその予備軍とされた人に対して、保健指導(特定保健指導)の実施が義務づけられた。そこで、腹部肥満の改善によりメタボリック症候群として取り上げられた動脈硬化リスク因子保有者が集団としてどの程度減少する見こみか、また集団の特性による違いがあるか検討を行った。
対象は、2006年に循環器健診を受診した関西の4事業所の勤労者(20-64歳、男性1877人、女性935人)と、大阪府八尾市南高安地区住民(40歳以上、男性798人、女性1464人)である。勤労者については20-39歳の若年勤労者群と、40-64歳の壮年勤労者群に分け、住民については壮年住民群と、65歳以上の老年住民群に分けて以下の検討を行った。腹部肥満によって生じているリスク因子として、特定健診で定められた基準に基づいた、血圧高値、血糖高値および脂質異常を取り上げた。そして勤労者と住民の各群において、各リスク因子に対する腹部肥満(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)の集団寄与危険割合を求めた。集団寄与危険割合とは、ある要因がある疾患の原因とされる場合、その要因を除去した時に、集団としてその疾患が減少する大きさを表す。
結果を図に示す。男性では、血圧高値に対する腹部肥満の集団寄与危険割合は、男性の勤労者で30%程度と比較的高い割合であったが、男性の地域住民や女性では10%程度と低い割合であった。血糖高値に対する腹部肥満の集団寄与危険割合は、血圧高値とほぼ同様の傾向を示した。脂質異常は、男性や老年の地域女性で30%程度と比較的高い割合であったが、勤労女性は割合がやや低下した。従って、腹部肥満改善により、集団で言えば男性の若年および壮年の勤労者はどのリスク因子も改善の期待が比較的大きいが、男性の地域住民や女性で改善の期待は小さい。またリスク因子で言えば、脂質異常で改善の期待は比較的大きく、血圧高値や血糖高値で比較的小さかった。
これまで循環疾患予防として高血圧対策は最も重要なものの一つであったが、特定健診に従い、メタボリック症候群の一構成要素(血圧高値)という位置づけで肥満対策に焦点を当てすぎると、高血圧改善の見込みは小さくなり、特に地域住民では顕著である。従って少なくとも地域住民の血圧高値に対して、減量に加えて減塩、節酒など高血圧を生じうる種々の要因にアプローチするような対策も十分とる必要あると考えられる。
メタボリック症候群における動脈硬化リスク因子に対する腹部肥満の集団寄与危険度割合

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大阪府民の健康状態の実態を把握するためには、健康科学センターを受診された府民のみを対象としていたのでは不十分であり、実際に地域に出向いて、現地の住民の生活習慣や健康状態を把握することが必要である。われわれは、大阪府八尾市南高安地区を対象地区として、長期間継続して、脳卒中、心筋梗塞等の実態調査を行っている。また、対照地区として秋田県井川町等の他府県の地域での疫学調査を行い、両者の比較を通じて、大阪に特徴的な健康問題を明らかにしている。得られた結果は大阪府の健康施策のエビデンスデータとして用いられている。
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八尾市南高安地区の壮年男性住民において、近年、心筋梗塞の発生率が有意に上昇していることが明らかになった(図1)。心筋梗塞の発生率の上昇は、農村部ではいまだ認められていないことから、都市部である大阪独自の健康問題であると考えられる。この背景として、高血圧、高コレステロール血症等の危険因子を有する者の頻度が近年増加している(表1)ことから、これらのリスク因子に対する対策を早急に行う必要があると考える。
