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研究開発 研究者・指導者の皆様へ

効果的なタバコ対策の方法論の開発とその制度化に関する研究

効果的な禁煙の働きかけと支援・治療が行える保健医療システムの構築

目的
本研究は、平成19~21年度の厚生労働科学研究費補助金を得て「効果的な禁煙支援法の開発と普及にための制度化に関する研究」に取り組んだものである。本研究の目的は、禁煙を効果的に推進する保健医療システムの構築を目指して、健診の場での禁煙勧奨・支援と医療の場での禁煙治療の推進方策ならびに相互の連携方策を検討し、制度化等によりその普及を図ることである。

研究成果
健診の場での禁煙推進に関する研究として、特定健診・特定保健指導の導入に合せて、特定健診・特定保健指導や職場の定期健康診断で活用できる禁煙支援の指導者マニュアル「脱メタバコ支援マニュアル」を開発した。次に、医療の場での禁煙治療の推進に関する研究として、禁煙治療の診療ガイドラインの骨子を完成させた。外部評価を経て日本医療機能評価機構医療情報サービス(MINDS)を通して公開する予定である。
喫煙者の禁煙行動のモニタリング調査の結果から、禁煙試行者において禁煙治療を受ける割合は、保険適用2年目にそれまでの4%から7%に増加する傾向がみられた。しかし、この割合は英国と比較して約1/4も低く、今後、登録医療機関の量的拡大による禁煙治療へのアクセスの向上と、喫煙者に対する禁煙治療の必要性の啓発が必要と考える。
わが国で広く実施されている健診の場での禁煙の勧奨と医療としての禁煙治療が相互に連携を密にすることにより、喫煙者に対して効果的に禁煙を促し支援する保健医療システムを構築することが可能である。そのためには、特定健診をはじめ、わが国で広く実施されている労働安全衛生法に基づく定期健康診断やがん健診に禁煙の保健指導を制度として導入し、医療機関での禁煙治療と連携した体制を整備することが今後の重要課題である。

環境変化に伴う主な禁煙関連指標の変化
環境変化に伴う主な禁煙関連指標の変化(詳細)

喫煙とメタボリックシンドローム発症の関係についての文献的考察

目的
本研究は、平成19~20年度の文部科学省科学研究費補助金を得て「禁煙がメタボリックシンドロームの構成因子に及ぼす長期的影響に関する検討」の研究として実施した。本研究では、喫煙とメタボリックシンドローム発症との関連性について文献的考察を行い、今後の研究の方向性をはじめ、メタボリックシンドローム対策における禁煙の意義や介入のあり方について検討するための基礎資料を得ることを目的とした。

研究成果
これまでに、Analytic Frameworkを作成し、喫煙とメタボリックシンドローム発症の関係、喫煙の内臓脂肪蓄積への影響、喫煙の糖代謝への影響に関する文献の評価を行った。その結果、喫煙がメタボ発症の危険因子であることを示す直接的証拠については、横断研究では喫煙がメタボそのものの発症のリスクを高めることを報告する研究が19編中14編と多かったが、コホート研究8編では研究報告間で一致した結果は得られなかった。喫煙の内臓脂肪蓄積への影響については、横断研究36編では研究報告間で一致した結果は得られなかったが、コホート研究12編では、むしろ両者の関連性を否定する研究が多かった。喫煙が糖代謝を有意に悪化させると結論された文献は72編中46編あり、特にコホート研究では44編中32編で有意な関連を認めた。また、喫煙が糖代謝を有意に改善させるという報告は全体のわずか2編であり、喫煙が糖代謝を悪化させる可能性が高いことが示された。さらに喫煙の糖代謝への影響を2型糖尿病に限って検討している文献においても48編中32編、コホート研究に限ると37編中28編で喫煙が糖尿病の発症を有意に高めるという結果であった。
今後、課題として残っているサイトカイン、脂質代謝、血圧と喫煙との関係についても文献レビューを実施する予定である。

喫煙とMSの関係についてのAnalytic Frameworkと対応する課題
喫煙とMSの関係についてのAnalytic Frameworkと対応する課題(表)
[喫煙とMSの発症の関係]
AF1.喫煙がMS発症の危険因子であることを示す直接的証拠
RQ1.喫煙はMSの危険因子か?
AF2.喫煙の内臓脂肪蓄積への影響(間接的証拠)
RQ2.喫煙は内臓脂肪蓄積を増加させるか?
AF3.喫煙のサイトカインへの作用(間接的証拠)
RQ3.喫煙はMSの発症に関連したサイトカインに影響を及ぼすか?
AF4.喫煙の脂質代謝への影響(間接的証拠)
RQ4.喫煙は脂質代謝に影響を及ぼすか?
AF5.喫煙の糖代謝への影響(間接的証拠)
RQ5.喫煙は糖代謝に影響を及ぼすか?
AF6.喫煙の血圧への影響(間接的証拠)
RQ6.喫煙は血圧に影響を及ぼすか?
[その他]
AF7.喫煙とMSが合併した場合の動脈硬化のリスク
RQ7.喫煙とMSが重なると、各々単独の場合に比べて動脈硬化のリスクは上昇するか?
AF8.喫煙の動脈硬化への直接作用(間接的証拠)
RQ8.喫煙はMSの構成因子への影響以外のメカニズムで動脈硬化を促進するか?[血管への直接作用など]

禁煙治療のための指導者トレーニングプログラムの開発と普及

目的
本研究は、日本禁煙推進医師歯科医師連盟の受託研究として、日本における禁煙治療の質の均てん化・向上と算定医療機関の増加による近接性の向上を目的として、指導者トレーニングの開発と普及に関する研究に取り組んでいる。

研究成果
開発した指導者トレーニングプログラムは、禁煙治療手順書に準拠した内容からなる「一般コース」と禁煙困難者に対する禁煙治療の方法を扱う「特別コース」の2つに分かれている。一般コースでは、まず事前学習としてテキスト学習や面接ビデオの視聴、アセスメントテストからなるeラーニングを受講してもらい禁煙治療の基礎知識を学習してもらい、次に半日ワークショップを受講し、禁煙治療のスキルを身につけてもらう。特別コースでは、禁煙困難者や妊婦、未成年、精神疾患患者などのSpecial populationに対する禁煙治療の方法を専門家による講義ビデオや症例検討から学習する。
今後、開発したトレーニングの使い勝手や改良点を検討するため、2009年にはパイロット実施を行い、2010年には全国的に普及をしていきたいと考えている。

一般コースにおけるトレーニング概要(表) 特別コースにおけるトレーニング概要(表)

健診の場での禁煙の短時間介入の効果の検討

目的
本研究は、平成19~20年度の厚生労働省がん研究助成金を得て「健診受診者を対象とした禁煙支援方法の開発と評価に関する研究」に取り組んだ。本研究では、健診の場での禁煙支援の普及をめざして、短時間の禁煙介入の有効性を明らかにするとともに、健診の場における禁煙支援の制度化にむけた政策提案のための基礎資料の作成を行うことを目的とする。

研究成果
岡山県にある財団法人淳風会健康管理センターと共同で、岡山県内の3社(いずれも製造業の工場)の健診の場を活用し、382名の喫煙者(介入群199名、対照群183名)を対象に、介入研究を実施した。介入群には、医師から禁煙の関心度に合わせた簡易な禁煙介入を1~2分程度実施した。
介入後6ヵ月間の禁煙試行率は介入群13.1%、対照群11.5%、6ヵ月後での断面禁煙率は各々5.0%、3.3%で、ともに有意の差ではなかったが、いずれも介入群の方がやや高い傾向がみられた。喫煙ステージ別にみると、熟考期・準備期において、禁煙試行率には差がなかったが、断面禁煙率では、介入群17.6%、対照群6.5%で、有意差はないものの、介入群の方が高い傾向がみられた。介入の効果を年齢、喫煙本数の影響を補正して調べるため、多重ロジスティック分析を行った。その結果、いずれも有意差はなかったが、禁煙試行率の補正オッズ比は1.15、断面禁煙率の補正オッズ比は1.56であった。喫煙ステージ別にみると、禁煙試行率の補正オッズ比は無関心期と前熟考期1.34、熟考期と準備期1.32、断面禁煙率ではそれぞれ1. 10、3. 41であった。
多重ロジスティック分析を用いて6ヵ月後の断面禁煙率を検討したところ、介入群と対照群の間で有意差はみられなかったものの、禁煙の準備性が高い熟考期・準備期においては補正オッズ比3.41と介入効果が示唆される結果であった。禁煙試行者の中で禁煙補助薬や禁煙治療を使った者は14名のうち2名(14.3%)と少なく、自力禁煙が大半であった。その理由として、対象とした3社のうち2社が所在する市では禁煙治療の登録医療機関がなかったこと、残りの1社については登録医療機関があるものの市内中心部から偏在していたことが考えられる。今後、健診の場での禁煙の勧奨の効果を高めるためには、禁煙治療へのアクセスの向上を図る必要がある。さらに禁煙治療の必要性や薬剤の効果についての教育啓発も必要と考える。

健診の場での短時間(1分間)の禁煙介入の効果-6カ月後断面禁煙率-
健診の場での短時間(1分間)の禁煙介入の効果(棒グラフ)

喫煙に関する環境の整備および目標設定に関する研究

目的
本研究は、平成20~22年度にかけて厚生労働科学研究費補助金を得て「喫煙に関する環境の整備および目標設定に関する研究」として実施している。本研究の目的は、喫煙分野において、健康づくりを支援するための環境要因とその整備状況を評価する手法を開発することである。

研究成果
本研究における環境評価指標の策定の枠組みは、米国政府による 「たばこ規制評価指標マニュアル」に準ずるものとして項目の精選を行い、具体的な内容については、わが国の実状にあうよう修正を加えた。開発する環境整備の客観的評価指標は、住民の主観的評価による「健康づくり支援環境質問紙」の主要項目5項目、オプション項目5項目について、都道府県・市町村担当者が地域の環境整備の到達度を客観的に評価するという視点から評価指標の概案(表1)を作成した。
今後、環境整備の客観的評価指標の項目の精選と実用性の検討を行う予定である。なお、客観的評価指標の項目の精選にあたっては、専門家会議を開催し、内容妥当性と実用性を踏まえた指標を開発する。実用性の検討は、大阪府や協力の得られる府内市町村を対象に調査を行う予定である。

住民評価による「健康づくり支援環境質問紙」と地域の担当者による環境評価指標との対応
住民評価による「健康づくり支援環境質問紙」 地域の担当者による環境評価指標(案)
■主要項目
■評価指標(案) ■備考
反喫煙に関するメッセージの普及 私の住んでいる地域では、たばこの害や禁煙のすすめについて、よく見聞きする。

・地域で行っている教育啓発の実状把握。キャンペーン、ローカルメディア、広報、チラシ等。

・実施状況を把握しても、国レベル等、その他の要因の影響もあるので、正確に把握することは困難であろう。

・国レベルで実施しているたばこ警告表示等の規制の影響等、あり。

たばこ製品の入手環境 私の住んでいる地域では、たばこの自動販売機やたばこが買える店がたくさんある。

・たばこを販売する店舗・自動販売機数:地域でたばこを販売するコンビニエンスストア、スーパー、自動販売機、たばこ店等数を把握。

・上記の数を、人口割りして指標(人口○あたり○軒)とする。

 
公共交通機関における無煙環境 私の住んでいる地域では、鉄道やタクシーなどの公共交通機関(ホーム・停留所を含む)で、たばこの煙を吸わされることがよくある。

・地域住民が利用する、鉄道、バス、タクシーの禁煙化の実状把握。

・駅構内、車両、ホーム上の全面禁煙を実施しているか否か。喫煙所、喫煙室等の分煙、等。

・タクシーについては、全ての会社で実施しているか、それとも一部の会社か。

・健康増進法第25条

飲食店における無煙環境 私の住んでいる地域では、飲食店でたばこの煙を吸わされることがよくある。

・条例(公共場所での全面禁煙)の実施の有無。

・地域の飲食店に対する禁煙化の推進のための介入の実施の有無。

・飲食店における無煙環境の実状を正確に把握することは困難であろう。

・健康増進法第25条

・公共場所での禁煙化条例(神奈川県で検討中)

禁煙治療の普及 私の住んでいる地域には、身近に禁煙治療を受けることができる医療機関がある。

・保険給付による禁煙治療を実施している医療機関数の把握、保険外の禁煙治療を実施している医療機関数の把握。それぞれの利用者数の把握。

・上記の数を、人口割りして指標(人口○あたり○軒)とする。

・禁煙治療の保険適用医療機関の増加のための介入の実施の有無。

・禁煙治療の保険適用医療機関の周知のための介入の実施の有無。

・特定保健指導の場での禁煙支援の実施率。特定健康診査・保健指導の受診者における喫煙率、禁煙率、ステージ等のモニタリング。

・その他の禁煙支援プログラムの実施の実状の把握。

 
オプション項目
喫煙防止教育の普及
私の住んでいる地域は、未成年に対する喫煙防止教育(たばこを吸い始めないための教育)を熱心に行っている。 【行政レベルで把握】

・学校の敷地内禁煙化、喫煙防止教育の実施等の条例や教育委員会等の方針の有無。

【学校を対象とした調査で把握】

・敷地内禁煙化の実施の有無。(敷地内禁煙、全館禁煙、分煙などでレイテリングしてもよい)

・喫煙防止教育の対象学年、時間数、内容等の実状把握。(開講学年や時間数などでレイテリングしてもよい)

医療機関における無煙環境 私の住んでいる地域では、医療機関でたばこの煙を吸わされることがよくある。

・医療機関を対象とした既存の調査等とあわせて実態を把握。

・地域の医療機関に対する禁煙化の推進のための介入の有無。

・健康増進法第25条

官公庁・公共施設における無煙環境 私の住んでいる地域では、官公庁や公共施設で、たばこの煙を吸わされることがよくある。

・官公庁およびすべての公共施設における禁煙化の実施状況の把握。

・健康増進法第25条

家庭における無煙環境 私は家で、たばこの煙を吸わされることがよくある。

・地域で、家庭における受動喫煙の防止に関する介入の有無。

・既存の調査にあわせた実態の把握。

 
医療従事者からの禁煙のすすめの普及 (喫煙者のみへの質問)私の住んでいる地域では、医療機関や健康診断を受診した時に、禁煙をすすめられることが多い。

・医療機関を対象とした既存の調査等とあわせて実態を把握。

・医療従事者を対象とした日常診療の場での禁煙治療や禁煙支援に関する教育啓発・研修会の実施の有無。